私が初めて「昔乗ってみたかったあの車」を手にしたのは社会人1年生の時でした。車は91年式プジョー405Mi16です。この車を「欲しい!」と思ったきっかけは輸入され始めた頃に雑誌「ル・ボラン」で記事を読んだことです。それから8年が経った97年の春、私はMi16を手に入れました。初めて私の前に現れたMi16を見て鳥肌が立ったのを今でも鮮明に覚えています。
Mi16にはそれから4年間乗りました。今は乗っていないMi16は実家の青森の納屋でナンバーを付けた状態で保存しています。今でも定期的に父親がエンジンをかけて調子を見ています。
乗るのをやめた次の年は、学生時代にはじめたダートトライアルの勝負の年だと考え、競技車を新車で製作しました(ランエボトミマキネン)。しかも、移動用に自分でセフテーローダーまで購入したのですが結果は思わしくなく、果てには練習走行中に転倒してしまったのです。幸いなことにラリー車用の車両保険に入っていたので経済的には痛くもかゆくもありませんでした。事実転倒しながら「次何に乗ろうかなー」と考えていました。そんな時です、こいつと出会ったのは……
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こいつは「昔乗ってみたかったあの車」のうちの1台です。実はこいつに出会う前に2台ほどB12を見て回ったのですが、どちらも既に売約済みだったのと、ロングボディだったのでその時はあっさり諦めました。それから約半年が経ち、また偶然中古車雑誌で見付けたのがこいつです。
90年式・ニコル物・ショートボディ・サンルーフ・SKサウンドシステム付・ワンオーナー・ガレージ保管・品川34ナンバー・記録簿・取説・ニコル車検証ケース・事故歴なし・距離7万km
偶然近所だったため家内とはやる気持ちを抑えて会いに行きました。店の前に止まっている姿を見て「にやっ」と笑い即決しました。「現状でいいので、とにかく安くしてください」とお願いし、車庫証明は自分で取って表示価格より安くしてもらいました。それでも相場から考えると高い買い物でした。この手の車は程度によって値段に大きな差があるので、気に入ったら多少高くても買うという強い意志が大切です。それに品川34ナンバーはお金を出しても買えませんから。
ここから先はB12の自慢話も交えて「こだわりの中古車との楽しい日々」をお話しします。みなさまに「こういう世界もあるのかー」と思っていただけたら幸せです。
現在B12は都内某所のガレージでランエボ(ミラー白いけどRSです)と仲良く並んでお出かけに備えて待機しています。ランエボは競技車両ということで現在外に出されてしまい、代わりに在庫として仕入れた車を収めることにしています。ここを含めて屋根付は3台分しかないため、基本的に在庫は多くても2台しか持ちません。
B12との付き合はもうすぐ4年になりますが、全くと言っていいほど私を飽きさせません。すごくいい奴です。その代わり健康を維持するにはそれなりの覚悟とある程度の財力が必要です。とはいえ、私はオートロマンを設立する前は普通のサラリーマンでしたので財力と言っても普通に想像できる範囲のレベルですが……
この車は一般的によく壊れると言われる12気筒エンジンですが、実際にエンジン関係で不具合を起こしたのはラムダユニットだけで、その他はノートラブルです。12本のインテークが黒いのがアルピナユニットの証です。このエンジンはNAメカチューンということでエンジン始動後の数分間はなんとも荒々しい鼓動を伝えてくれます。それが終わるとアイドリングはピタリと落ち着き「旦那、準備完了ですぜ」と訴えてきます。ここに至るまでの一連の儀式が例えようもない楽しい時間です。
アルピナと言えばエンジン、サスペンションの他に内装にも手が入っているのがオーナーにとっての悦びの1つです。この車にはブルーとグリーンのバックスキンのステッチがドアトリムとシートに縫い付けられています。その他には、運転席のウッドパネルにシリアルプレートが貼りつけられています。たまにオークション会場で見かけるアルピナにこのコーションプレートがなくなっているものがあります。お気持ちはわかりますが次のオーナーのためにもそのままにしておいてあげましょう。ウッドパネルはノーマルと変わらないように見ますが、アルピナオリジナルのエルム(楡の木)ものです。
ガレージ保管なので艶々です。シートもバケット形状(E34 M5と同じ形状)です。他に内装でノーマルとの相違点はメーターです。盤面にグレーのマット仕上げをし、真ん中にALPINAの文字がプリントされています。それからスピードメーターが320km/h表示になっていますが、正直これはやりすぎですね。300km/hで十分です。まあこれは演出ということで許してあげましょう。ちなみに現在の走行距離は109,574kmです。購入後年間1万kmぺースです。
それで肝心の走りはどうなのか、10万kmも走ってる外車は大丈夫なのか、一番気になるところです。結論を申し上げると「もうとにかく最高!」この一言に尽きます。まあここまで仕上げるのにファイル1冊にも及ぶメンテナンス履歴があるので当たり前なのですが。
これを聞いて「やっぱり壊れるんだ、お金がかかるんだ」と思ってこの先を読むのをやめないでくださいね。違うんです、壊れたからお金をかけたんじゃないんです。ここをこうしてあげたらより新車に近づくんじゃないかな、もっとアクセル操作に対してダイレクト感が欲しいよな、上の吹け上がりってもっと良いんじゃない? 現行のノーマルと比べてここが劣るな……。惚れ込んでしまうと次から次へとこうしてあげたいという気持ちが湧いてきます。その結果が1冊のファイルになったのです。ファイルにうっすらと見る黄色い影が最近の領収書で、内容はダイレクト感を増すためのトルクコンバーター交換です。4年間ずっと同じ工場にお世話になってきましたが弊社で購入されたお客様で整備を希望される方にはこちらで実施します。ディーラーより安く、なんと言ってもトラブルシューティング能力に長けたお店です。
では、なぜそこまでして新車じゃなく中古にこだわるのか? そのわけは中古車を「車というカテゴリー」で括れない、例えるならカメラ・時計・古着などに通じるものだと考えているからです。お気に入りの靴・コート・カメラ・時計……良いものは修理して使い続ける。その感覚と中古車との付き合い方は同じだと考えています。
「ディテールに神が宿る」――これはアルピナB12が登場した時カーグラフィックの広告です。もし、あなたが今日街で見かけた古い車に心ときめいたのなら、きっとその車には神が宿っていたに違いありません。そしてあなたはその車に一目惚れしたのです。
オートロマンの仕事はそんなあなたに代わって、一目惚れした車を探してくることです。そしてその後の中古車との楽しい日々をみなさまと共有できたら中古車屋としてこれ以上の幸せはないと考えています。これからも実体験をもとに、みなさまに「こだわりの中古車」との楽しい付き合い方を提案し続けて参ります。
有限会社オートロマン 取締役 佐々木義文



















